運命の場所へ

インタビュアー(以下、イ):以前、アメリカに住んでおられたこともおありなんですね?

杏樹(以下、杏):
そうです。30歳になる前だったでしょうか。ちょうどそのころ、アナウンサーのお仕事で、朝6時半から8時半までのラジオ番組を、月曜から金曜まで帯で持っていました。それがもう、本当に忙しくて。その大きなレギュラー番組が終わって、何かひと休みしたくて、ふと思い立ってアメリカに行くことにしたんです。

その渡航先を決めたのも、本当に突発的で。 電車での移動中にパラパラと本のページをめくっていたら、頭に“留学”という文字が浮かんだです。「あ、留学をしなければいけない」と。
その足で留学センターに向かいました。 どこかないでしょうかとセンターの方に頼み込み、何カ所か候補を挙げてもらい、申し込んでみました。4月の終わりだったせいで、ほかの学校はもう申し込みを締め切られていて、結局、返事が来たのは1校だけ。 それがアメリカ・ワシントン州のシアトルの英語学校でした。

なので、6月の13日にはあっという間に飛び立ったわけなんですけれど。 そして、シアトルの空港に着いた途端、「ここだ」と思ったんです。 その空港内を地下鉄が走っているんですが、私はその光景を13年前からずっとずっと何度も見ていた記憶があるんです。 「あぁ、来るべきところに来た」と。 そういうこともあるものなんですね。それで、そこに3か月の休暇で行ったつもりが、結局は5年3カ月も滞在したんですよ。

イ:運命の場所ですね。

杏:
それまでも精神世界には興味があったんですけど、アナウンサーの仕事も忙しくやっていましたし、まだそこまでのめり込むほどのものでは無かったんですね。 でも、この留学を機に、運命のいたずらというものをとても感じましたね。アナウンサーを辞めてシアトルまで来たにもかかわらず、1週間後に日系ラジオ局からスカウトされ、また働き始めたという。

イ:運命ですか。

杏:
そう、運命なんですよ。